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こんにちわ! 関 なみです!


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「夢のあとさき」  (1)

 書き直しもかねまして、こちらに削除した小説を載せました。
 内容も変わるかも? です。よかったら、読んでやってください。 



  『夢のあとさき』
(1)春の教会にて


 窓一面に春が溢れている。
 風に花びらを雪のように舞い散らせ、重いほど咲き誇る枝を広げた桜の三本の大木。まだ、緑の葉を纏わない木々の林立する中に、この桜だけが春に薄桃の色をつけている。
 郊外にあるこの教会は、白いチャペルを木々の間から覗かせた、広いガーデンを持つ静かな風景の中にあった。
 そのガーデンを覆うように三本の桜の木は、咲き誇る枝を絡めあい、芝生の庭を翳している。そして、その風景を絵画のように窓から見ることができる結婚式場が、庭を囲んで真向かいにある。
 葉月真帆は、純白のウエデイングドレスを身につけ、結婚式場の控え室の窓辺に座っていた。部屋の中も桜の薄桃色の陰に染められ、穏やかな春の香りが漂ってくるようだ。
 その天井近くまで開いた大きな窓の風景を、真帆は身じろぎせずに眺めていた。微かに光沢のある白の、シンプルなウェディングドレスと、たっぷりとほっそりした肩に溜まる長いベールに美しく飾られながら、堅い表情を崩すこともなく、ただ見つめている。

 今日、彼女はここで、人生最良の時間を過ごす。人々の祝福を受けて。

「着いたかしらねえ、祐介君……」
留袖の襟元を整えながら、真帆の母の孝子は、腕時計に目を落としながら呟いて、溜息を漏らした。彼女は落ち着かない様子で、しきりに控え室の扉に目を向けている。朝から、一度も姿を見せない新郎を心配して、折角の娘のウエディングドレス姿も、感激して眺めるという気さえしないほどだった。

 新郎がまだ姿を見せない。この異常な出来事を知ったのは、真帆の着付けが漸く終わった頃だった。
 新郎側の親族から、祐介がまだ着いていないと詫びが入った。来たらここへ越させるからと、彼の叔母に当たる人は、不安な顔で遣ってきて、急かされるように出て行った。
 孝子は、娘の晴れ舞台と浮かれていた気分に、水を差されたような思いだったが、その時は、すぐに現われるだろうと思っていた。
 しかし、新郎の祐介はまだ来ない。刻々と式の時間は迫ってくる。

 真帆は、猫足の優雅なチェアに軽く腰をかけて、白く透き通った蝋人形のように無表情な顔を、落ち着かない母に向けた。
「忙しいのよ、きっと。私の我儘を聞いてくれて、式の後すぐに旅行へ行くようにしてくれたんだから。仕事を片付けるのは大変だと思う」
「何を言ってんのよ! こんな大事な日に仕事云々なんて言ってる人いないわよ! 馬鹿にしてるんじゃないの、あの人」
 孝子は、不愉快そうに眉根を寄せ、珍しく声を荒げた。
 彼女にとって娘の一世一代の晴れ舞台を、滞りなく終わらせてやりたいというのが親心だろう。娘を不安にさせているフィアンセが、今は腹立たしくて仕方ない。
「何故、こんな大事な日に遅れるのか!」と、あの扉から祐介が飛び込んできたら、怒鳴ってやるつもりでいた。
 確かに、娘のフィアンセは、馬鹿がつくほど仕事熱心だ。製薬会社の研究員をしているが、式の準備でさえ忙しいと、いつも真帆に任せていた。おまけに、いよいよ具体的に挙式の事を進める頃には、突然にドイツへ新薬の共同開発などと言って旅立ってしまった。とにかく、「仕事、仕事」と言い訳されて、孝子も流石に腹に据えかねている。文句の一つも言いたくなるではないか。
 だからと言って、娘の結婚相手である、大河内祐介(おおこうちゆうすけ)を嫌っている訳ではない。むしろ、大学生の時に、娘の友人として家に出入りするようになって、その爽やかで礼儀正しい好青年を「恋人になさい」と、焚きつけたのは孝子だった。思惑どおりに付き合いだした娘を、たった一人の親として暖かく見守ってきた。

 あれから七年、やっと長い交際期間を経て結ばれる二人を、彼女は心から祝福している。夫を真帆の幼い頃に亡くし、女手一つで育ててきた孝子にとって、真帆を祐介に託すことはこの上ない喜びであり、そして身を切られるような淋しさも感じる複雑な一日となるはずだ。
 しかし、今はそんな気持ちも吹き飛ぶような容易ならざる事態に、孝子は時間とともに苛立ってきた。
「変だわよ、祐介君」
 まだ言い足りないように、椅子に掛けた真帆の傍に立って、前にしつらえた等身大の姿見を覗き込んだ。
「忙しいから、結婚式は教会でやって、披露宴も身内だけのガーデンパーティだなんて、あんたのおばあちゃまが生きていたら、きっと許して貰えなかったわよ! そりゃあしきたりにはうるさい人だったんだから」
 真帆の母は、腕時計に目を落としながら呟いて、溜息を漏らした。
「仕方ないの。祐介は忙しい人だから。今回だって、わざわざドイツから帰ってくるのよ。式を取り止めようって言わないだけ、マシよ」
 真帆は、暗い表情をしたままで、窓を眺めながら言った。
「それはそうだけど……」
 孝子は、美しく着飾りながら、もう一つさえない表情の真帆が、実はずっと気になっていた。
 まさか喧嘩でもしたのかしら――と、朝から、気になっていたが、きっと緊張しているせいだと思い直した。愛する人と結ばれるという、幸せの絶頂にいるはずの花嫁が、暗い気持ちでいるわけがない。
 孝子は、これ以上娘が余計な心配をしないように、明るく言った。
「でも、とにかく早く、貴女のこの艶やかな姿を見せてやりたいのよ。きっと、あんまり奇麗だから、驚くわよ」
 真帆は、孝子の言葉にふっと笑みを漏らし、少し頬を赤くした。 表情の緩んだ真帆を見て、孝子もほっと笑顔になった。

「七年間も結婚の話が出ないから、母さん、心配してたのよ。でも良かったわ。まあ、少し身勝手なところもある人だけど、優しいし、しっかりしてるからいいだんなさんになってくれるわよ」

「そうね。思い込んだら、人の言うことなんて聞く耳持たずで、何でも一人で決めちゃう人だけど、そんな人の方が私には合ってると思う。製薬会社の研究員だっていうと、皆驚くの。バイタリティある営業マンタイプだって」
と、少しはにかんで新郎のことを語る真帆が、孝子には本当に可愛く見えた。

 常々、控えめなタイプの真帆には、多少強引なくらいの頼り甲斐のある男の人が良いと思っていた。祐介は、真面目で何事にも懸命で、確かにワンマンなところはあるが、いつも真帆を気遣う優しさも持っている。娘の結婚相手としては、言うことはない。 

 孝子はもう一度、腕を上げて時計を見た。
「後20分で式の時間よ。そろそろ、教会の方へ向かう時間だね。祐介君、もう来てるでしょうねえ……」 
「大丈夫よ」
 そうポツリと言うと、真帆はまた、窓の桜に目を向けた。

 コンコン。
 その時、扉がノックされた。

「ああ、やっと祐介君来たんじゃない? はい、どうぞ!」
 孝子の声に、控え室の扉が大きく開けられた。真帆も、無表情なままで、扉の方を見た。
 ドアが開けられて、そこに立っていたのは、祐介の両親だった。初老の人の良さそうな夫婦は、同じ様な強張った表情をして、突然深々と頭を下げた。
「お父義さま、お母義さま」
 怪訝な顔を向ける孝子の顔を見られないというように、もう一つ分頭を下げ、
「真帆さん、お母さん! なんと言ったらいいか……。祐介と全く連絡が取れないんです。勤め先や立ち寄りそうなところを皆で探したのですが、手がかりさえなくって……。教会側が、どうするのか……。つまり式を中止にするのかどうか訊ねてきていまして。私達としても、このまま息子が現れないとなると中止せざるを得ないかと……」
と、祐介の父親は搾り出すような声で話した。

「ど、どうして! どういうことです! 祐介君、連絡もして来てないんですか!? 中止だなんて、そんな馬鹿なことがありますか!」
 孝子は、ただ頭を下げたままの祐介の両親に、困惑して怒鳴った。式の間近になって、新郎が来ないなんて、謝ってすむ問題ではない。ましてや、招待客がすでに式の開始を待ちわびているだろうに……。
 孝子は眩暈を覚えるほど、焦燥感に襲われた。娘の晴れの日に……、こんな信じられないことが起こるなんて思ってもみない……。たやすく中止だなどと口にする彼の両親に怒りを覚えた。
 そして、困惑した顔で窓辺の真帆を振り返った。真帆は黙ったままで、頭を下げたままの祐介の両親を見つめている。
「どうしましょう……。今更、式を止めるなんて……そんなこと」
 孝子は頬に手をあてがい、真帆に向かって呟いた。
 真帆は、しばらく皆を見て、考えていたようだが、決心したように言った。
「きっと、祐介さんは仕事で遅れているんです。ここへ直接来るって言ってましたから、向かっている筈です」
「でも、それなら連絡くらいあるでしょう。何かあったんじゃあ……」
 と、孝子は蒼白の顔をして、沈んだ声を出した。
 その取り込んだ様子を、入口の後ろから伺っていた教会側の世話係が、中を覗き込み、訊ねた。
「あのう、ご両親様。それで式の方はいかがなさいますか?」
 黒のスーツの世話係は、時計を気にしながら、中の沈鬱な面々の一人一人に顔を向けた。
「あ、新郎は遅れてきますが、時間どおりはじめて下さい。これ以上ご招待の皆さんを待たせたくないので」
 と、真帆は孝子の肩越しに、間髪いれずに世話係に向かって返事をした。
「真帆! 待っていた方がいいんじゃない? いくらなんでも新郎がいない式なんて可笑しいわ」
 孝子は、迷いもしないで返事をする娘に、諭すように顔を覗き込んで言った。

「いいの。次の組が待っているし、遅らせたら迷惑をかける。こっちに向かっているのは確かだし、つくまでの辛抱だもの」
「真帆さん、本当に申し訳ない。どうか祐介を許してやって下さい」
 祐介の両親は、声を震わせて、また深々と頭を下げた。
「でも、祐介君が来るまで、神父さんの前で一人よ。そんなこと可哀想で見てられないわ!」
 顔を歪めて孝子はそういうと、口を閉ざしてしまった。祐介に対して怒りが込みあげて来ているのは、誰が見ても解かる。彼女の言葉に、皆、一様に黙ってしまった。

「あの……」
 控え室の扉を開け放ったままの入口に、ひょうっと長身の若い男性が立っていた。
真帆も、孝子も、黙って顔を向けた。少し伸びた髪を掻き揚げながら、彼は、照れ臭そうに、躊躇いがちに真帆を見て、そして、ぼそりと言った。
「真帆さんさえ良かったら、僕がエスコートしましょうか?」
「え?」
「迷惑をかけてる馬鹿兄貴の代りに……」
 真帆は、目を丸くして、驚いた顔を彼に向けた。彼女の知らない顔が、優しく微笑んでいる。

 窓越しの桜は、少し強い風に吹き降ろされて、花びらが奔放に舞い散っている。
 春の嵐に散ってしまう桜の花は、美しければ美しいほど心に切なさを残してゆく。

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この記事に対するコメント











<祐さん

こんにちわ♪
公募? いえいえ、こんなのでは話しになんないですよ。出しませんって。
読んでないと言って頂く方もいるので、書き直しかねて、乗せようかと。
ちょこちょこ、昔の作を書き直して投稿してるところなんで。
自分の欠点も見えてきて、良い機会になりました。
親近感あるでしょ? 祐さんのことです〜!
ひどい目に合いますが……(嘘だよ〜〜っ)

書いてます? また酷評に伺います(爆笑
頑張ってね、祐さん!
なみ | 2008/10/03 7:27 AM


……祐介、なんですね。親近感があります(苦笑)

満足いくまで推敲されたら公募に出されるんですか? いつか書店に並ぶのを楽しみにしたいと思います☆

ではではm(__)m
弥生 祐 | 2008/10/03 12:04 AM


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