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こんにちわ! 関 なみです!
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    「天上紅蓮」拝読〜。
    0
       渡辺淳一氏の「天上紅蓮」読み終えました。

      ネタバレしないように、感想をば……。
      うわ、やめて〜〜〜と言いたい失楽園だった。
      いや、やらしくないですよ。
      でも、綺麗でもない。
      で、深いかなとと思うほど、意外と単純明快な話…。
      これをどう読んでいいのか、私には理解できんかった…。

      読み手に史実をたどらせて、登場人物の生き方をそれぞれに受け取らせようという試みなのか、歴史絵巻の明媚さとそこに生きる人間を淡々と、わざと綴ったのか……。

      深読みできない内容(年の差恋愛)だったので、まるで年齢を重ねた人の応援小説家と思ったりもした。
      絶対権力をもった法王であったことが、面白みをそいでいる気がする。

      どう読めば良かったのか、読んだ方の感想を聞きたい気がする。
      | - | 14:33 | comments(0) | trackbacks(0) | - | ログピに投稿する |
      もうすぐクリスマス♪
      0
         あっという間に、12月……。

        忙しい時期になりました。
        いかがおすごしでしょうか?

        きっと子供さんにプレゼントをねだられたり、会社のクリスマス会とか忘年会の誘いに作り笑いでこたえたり、今年も賞とは無縁だったなとかつぶやいたりしているんでしょ?

        寒いと肩をすぼめて、家へ帰るあなたの姿が目に浮かぶようです。

        体調は良くなりましたか?

        最近、振り返る余裕もないですが、それだけ前向きになったのかと思います。
        何にしても、思い出は多い方がいいですもの。



        皆さん、風邪をひかないように!
        ひと月たっても、咳が治らないんだよね。
        マスクが服と同じ感覚になった……。
        | 私のひとりごと日記 | 02:55 | comments(2) | trackbacks(0) | - | ログピに投稿する |
        秋ですねえ
        0
           ああ、もう 秋だなあ。

          今、何かと忙しい季節です。
          お祝いもあるし、冬用の商材の販売時期だし、来年の新入学の注文もあるし…。

          嫌ですねえ。年末。

          こんな仕事(本屋さん)にかかわっていると、一年の早い事!
          年末乗り切ると、決まって体調崩すんだけどね。

          最近太りました。ウエストに肉が……。
          ずっと心配事や悩みがあって、まあ、一つずつ解決していってますが、まだまだ大変。
          去年から、ペットのコーヒーに嵌りました。
          おいしいとは思わないんだけど、飲むと緊張感がなくなる気がするんよね。
          それとめちゃくちゃ甘いケーキとかお饅頭を一緒に食べるわけ。
          精神的に披露すると、過食症になるの分かるわ。
          食べるとほっこりするんだよね。で、ついまた食べる。
          体重が増えて、胸がおっきくなったぞ!
          おまけに、胃の具合も良くない。
          反省してコーヒーはやめました。

          皆さんも体調にはくれぐれも注意して。
          疲れてないですか?


          ☆お返事
          <拳さん
           有難うございます。これからはきっちり更新しますので、またお話しましょう!
           最近、忙しさもあって、私もなかなか書けないです。
           このまま趣味で終わりそうな感じ。
           まあ、それでも楽しいのには変わりないですけど。
           また、来てくださいませ♪
          | 私のひとりごと日記 | 00:15 | comments(0) | trackbacks(0) | - | ログピに投稿する |
          休日です
          0
             今日は休みを取った。
             近ごろ個人情報と合わせて、休日の消化もうるさく言ってくるんで、随分休みやすくなった気がします。
             でも休日って、あっという間に終わっちゃうね。
             私は例のごとく、読書で一日を終わるという寂しい実情です。
            11月になると京都の紅葉が、思いっきりきれいなんですけどね。
             帰ろうと思いながら、近くて遠い故郷!

             昨日、「本当は強い自衛隊」という本を読みました。
             これは面白い新書でした。
             災害救助でその活躍ぶりは周知の事実ですが、一般的には知らないことが多いですね!
             たとえば、「政府専用機」って、自衛隊の航空部隊って知ってました?
             パイロットもアテンダントもすべて自衛隊員だった! 
             当然と言えば当然なんだけど、自衛隊っていう言葉自体、報道されないから意外でした。
             他にも、いろんなところで任務に就いてらっしゃいます。
             いろいろと、わかりやすく面白く書いてあります。

             寒くなってきて、温泉が恋しい。
             リフレッシュするいい季節なんですけどね。

             コメント有難うございます。

            <カオリン
             お久です!! 忘れないでいてくれたんだね! 嬉しいです。
             元気にしてますかあ。
             時間がなくて、なかなか書けないけど、ブログくらいは更新しようかと思っています。
             また、何か企画あったら誘ってくれ〜。
             
            <拳さん
             はい、まだちまちまとやってます。
             拳さんも書いてますか?
             随分冬眠が長くて、どこもかしこも中途半端です(泣)
             また、ここを中心に復活しようと思うので、遊びに来てくださいね♪
            | 私のひとりごと日記 | 11:03 | comments(1) | trackbacks(0) | - | ログピに投稿する |
            ほほえみ
            0
               練習に書いたものです。読んで頂けたら嬉しいですが。  

                        
              ほほえみ
                                                BYなみ 
               東京駅から新幹線に乗り二時間余り、漸くごった返した京都駅に着いた。お盆休みの頃の京都は、息苦しいくらいにむし暑い。人ごみにうんざりしながら汗の滲んだ手で息子の手を引く。息子の亮介はというと、快適な指定席での熟睡から目覚め、今にも手を振り切って走りだしそうに興奮している。
               駅の前にあるロータリーで、故郷へ向かうバスを待つ。これから一時間以上かけて、故郷の村へ向かうのだと思うとため息が出た。
               JRと車体に書かれたブルーの大きなバスが到着すると、七歳になった息子は目をキラキラさせて、弾んだ足取りで昇降段を上る。お盆に、祖父母の待つ田舎へ行くのが、亮介にとっては一番の楽しみなのだ。
              「亮介! 気を付けて」
               動き出したバスに、ふらつく亮介の腕を掴んで、最後尾の座席へとついてゆく。去年よりも大きなリュックを背負い、亮介は躊躇いもなく最後尾の席へ滑り込む。私が隣にくっつくように座ると、ニッと歯を出して笑う。そして背中のリュックを身をよじりながら下ろした。
               「おばあちゃん、カブトムシを捕まえたって言ってた。家の玄関の蛍光灯にとまってたんだって! すごいでしょ!」
               バスのエンジン音に消されないように、亮介は上ずった声で話掛けた。
              「へえ、すごいねえ。おばあちゃんちは不思議ワールドだね」
              「うん! 虫とり網を買ってくれたって言ってたし、おじいちゃんと一緒にいくんだあ」
               新幹線ではすぐに眠ってしまったのに、乗り心地の良いとは言えないバスも、息子の興奮を冷ましてくれそうにない。
               東京育ちの亮介にとって、夏の田舎は遊園地以上の喜びがあるようだ。一年に一度、お盆の帰省は息子にとって特別なのものなのだろう。
               混んだ市内を漸く抜けて、車窓は緑の山へと変わる。もみじで有名な山城高雄を過ぎ、バスは長いトンネルをくぐり、峠道を走る。亮介は窓の風景を、ガラスに額をくっつけて眺めている。そのまっすぐな瞳は、深い山の中に恐竜でも探しているようで、思わず微笑んだ。確かに、連なる山々を眺めていると、乾いたビルの街にはない奥深い不思議な命の気配がする。
               膝に置いたバッグの中で、携帯電話の低いメロデイが聞こえ、慌ててバッグを探る。夫から返信のメールが届いたのだ。
              ――『もうバスに乗ってるかな? 明後日、早朝こっちを出る。京都市内でレンタカーを借りるから、昼過ぎには着くと思う。お義父さんお義母さんによろしく』
               銀行員の夫は、今年はカレンダー通りにしか休みが取れず、土日に掛けてやってくる。
               夫の休みが取りやすい日に一緒に帰省すれば亮介も喜ぶだろうが、私はどうしても十二日に実家に帰りたかった。
               その日は妹の墓に参って、家に連れて帰ってやりたかったのだ。
              「ママ、橋だよ。赤い橋! もうすぐおばあちゃんのうちだ」
               亮介が私を振り返り、明るい声で言った。赤い塗料が塗られた鋼鉄製の橋が、曲がりくねった道路と道路を繋いでいる。
              「よく覚えているね、亮介」
              「うん!」
               あどけない笑顔が、誇らしげに向けられる。
               七歳……大きくなった。この春、ランドセルを背負い緊張している息子の顔を見た時、思わず涙が零れた。五体満足に生まれてくれて、元気に成長する亮介に感謝したい気持ちだ。小学生になった晴れ姿は、親にとってこれほど嬉しくて誇らしいものかと感無量だった。私は本当に幸せだと思う。

              「おばあちゃん! おじいちゃん!」
               バスの駅で待つ母を見つけた亮介は、ドアが開くや否や飛び降りた。そして母の広げた手の中へ飛び込んで抱きついている。父は笑いながらバスから降りる私に手を差し伸べて、
              「お帰り。よう来た、よう来た」
               と、微笑んで、旅行鞄を受け取ってくれた。
               小さな村はいつもと同じ風情で、私を迎えてくれる。区画整理された田んぼはまだ一面に緑で、吹き抜ける風に撫でられ波立つ湖のようだ。家へ向かう細い道の両脇の木々から、耳をつんざく蝉の声。数件の家が立ち並んだだけの村を覗き込むように、深い緑の山々が連なっている。昔ながらの茅葺の民家はどっしりと構え、時の流れなどどこ吹く風だ。
               ただ、二人きりで暮らしている父と母は、また年老いた。
              「疲れたやろう、笙子。東京から子連れで、大変やったなあ」
               母は私に並んで歩きながら、背中をポンポンと叩いた。
              「ううん、今年はそうでもないわ。亮介がお利口だったから。ぐずることもなかったし、勿論だっこしてなんていわなかったから」
               父の手を引いて、家へ急ぐ亮介を見ながら、母と笑い合った。
              「本当に、毎年毎年、びっくりするくらい大きくなって……。入学式のビデオは何回もみているんや」
              「そう。またビデオ撮って送るわね。なかなか帰ってこれないから」
              「ああ、そうして。父さんも本当に楽しみにしているから」
               六十歳を過ぎた両親が、この狭い村でさびしく暮らしていると思うと、胸が詰まる。村役場を父が退職してから、細々と農業をしながら年金で暮らしを立てている。私が関東の大学へ行って、そのまま就職し、東京在住の人に嫁いでしまったためだ。本当に有り得ないわがままを許してくれたものだ。
              「でも、そろそろ亮ちゃんに弟か妹がいてもええんやない? 一人っ子は淋しいやろうに」
               私は思わず立ち止まった。母が心配そうに顔を上げる。
              「一人でいいと思っているの。亮介は元気で、健康だから」
              「笙子……。まさか、さやかのことがあるから、子どもをためらっているんか?」
              「そうじゃないけど……。浩平さんも一人でいいって言ってるし……」
               母は俯くと、
              「そうやったら、いいけど」
               と言って、小さく肩で息を吐いた。
               私は母の背を押しながら、父と亮介が手を振っている庭さきへと急いだ。
               
               ちーんと、澄んだおりんの音が、静かな座敷の空気を震わせる。
              「さやか、お姉ちゃんが帰ってきたよ」
               両開きの扉を開け放し、きれいにお盆の飾りを終えた仏壇の前に座ると、母は奥へ語りかける。戸袋のかまちには、白黒の祖父母の写真の隣に、白地に桃色の花が染められたゆかた姿の妹が、小さな口元から白い歯を二本覗かせ笑っている遺影。写真を見上げるたびに、こんな笑った顔をいつ撮ったのだろうと思う。七歳で亡くなるまで、家と病室しか知らない子だったのに、写真は笑い声が聞こえてきそうな笑顔。
              「さあ、亮ちゃんも、さあちゃんにただいまって言ってやってな」
               母の隣に座った亮介は神妙な顔で、手を合わせている。
              「もう二十年になるのね。さやかが死んでしまって……」
              「そうね。生きていたら二十七歳……」
               母はそういうと、見下ろしている写真へ顔を向けた。母が二十七歳になった妹をどんなふうに思い描いているのかと思うと、見上げた写真が霞んできた。想像することも出来ないくせに、笑みを浮かべている顔が浮かぶのは、この笑った写真のせいだ。
              「お母さん、私、先にお墓へ行ってくるね。さやかを迎えに」
              「ああ、そうしてやって。きっとあんたが来るのを待ってると思う。おじいちゃんとおばあちゃんは今朝、迎えに行ったから」

               さやかは五つ違いの妹だ。
               生まれたのが女の子と聞いて、私は大喜びだった。いっぱい可愛がってやろうと、会えるのが楽しみで仕方なかった。
               でも、さやかは何日経っても病院から帰ってこなかった。それどころか、京都市内の大学病院へ転院して、母はそのまま付き添うことになったのだ。
               私はまだ五歳で、母と離れるのは初めてだった。同居している祖母がまだ元気で、私の面倒を見てくれたが、母のいないことがどんなに悲しかったか……。それも赤ちゃんと帰ってくると指折り数えて待っていたのに、父に訊ねても、いつになるかわからないと辛そうな顔で言われた。母とこのまま会えないではと、毎日病気になってしまいそうなほど悲しかった。口数も減り、元気の無くなっていく私を、祖母も父も心配して優しくしてくれたが、幼稚園から帰ると泣いてばかりいた。あんな小さな頃のことなのに、その淋しさはしっかり記憶に刻まれている。
              ひと月後に、父がやっと病院へ連れて行ってくれたが、母は暗い顔をして、言葉少なに私を抱きしめるだけだった。
               はじめて見た妹はガラスの保育器に入れられ、いろいろな機器につながれていた。びっくりするくらい小さくて赤黒い、醜い塊……ぽっちゃりとした可愛い赤ちゃんのイメージからは程遠かった。心臓の弁が奇形で、きれいな血と汚い血が混ざってしまうのだと、隣に立った父は声を潜めて教えてくれた。
               それでも手術に耐え、一年後、さやかは我が家にやってきた。私達一家に漸く安息の日々が訪れた。
               透き通るほど白い肌。睫毛の長い大きな黒い瞳。さらさらした髪。さやかはとても可愛い子だった。体は小さくて、成長は遅れていた。それに動き回ると、途端に疲れてしまい、ほとんど寝たきりだった。抵抗力のない体は、よく熱をだし、おまけに突然の発作に見舞われる。七年間に何度も入退院を繰り返し、そのたびに私は母と引き離され、寂しい思いを強いられた。
               父と母は盲目的にさやかを愛していたのではないだろうか。目を離せない重篤の心臓病の子の世話は大変だっただろうと思うが、いつもさやかに向けられるのは慈しむような笑みだった。
               子供を持ってわかったことだが、生まれつきの障害を持った我子に対して、親はひどい罪悪感を持つと思う。子供を愛するが故、まるで自分たちの罪であるかのように感じてしまっても仕方ないだろう。そして健常な子供以上に愛するのかもしれない。私の両親も、さやかの成長に一喜一憂し、全てをささげている……そんな感じだった。

               一人で村の墓地のある裏山の小道を、花とお供えを持って上って行った。山裾に小さな寺と村の墓地がある。
               七歳になって、二度目の手術を目前にしながらこの世を去った妹。祖父母の眠る墓の隣に眠っている。人工弁を取り付ける手術が成功したら学校へも行けると、喜んでいた矢先の死……。
               三つの墓石の前で、線香に火をともし、花を飾る。お菓子と果物を供え、私は静かに目を閉じて手を合わした。
               夕刻のオレンジ色の陽射しが、ひぐらしの声を誘うように伸びてきた。周りを杉木立が囲む、村のもっとも神聖な場所は静寂の時を迎えようとしている。
               私は目を開けると、「さやか」と名を呼び、くるりと背を向けた。
              「さあ、おうちへ帰ろうね。おんぶしたげるから」
               おぶっているように背に手を回し、立ち上がった。お盆の前日に、亡くなった人の魂を家に連れて帰ると、村の人たちはそういって墓に迎えに来る。さやかが死んでから、それは私の役目になった。そうすることが私のささやかな償いだった。
               さやかは外で遊ぶことが出来なかったから、いつも縁側に置いた一人掛けのソファに座って、景色や通る人を眺めて過ごしていた。私はそんな幼い妹を見かねて、時々おぶって散歩してやった。小学生の私には結構大変だったが、さやかは父の背中より喜んだ。しっかりおんぶ紐を掛けてもらって、秋にはトンボが舞い飛ぶ田んぼへ、春には土手につき出したつくしを見せに、夏には川までおぶって行って、冷たい清流の中へ立たせてやった。
               おねえちゃん――。
              「さやか、ごめんね……ひどいおねえちゃんで……あんたを死なせたんは私やのに……」
               もう背負えない妹に向かって呟く。十二歳の私がやったことを妹が許してくれるはずがないのに。
               私はさやかが可愛かった。両親と同じように大切にしてやりたかった。
               小学校に上がってから、さやかがいるから学校の行事に母が来られなくても、家族で旅行に行けなくても、そんなことは当たり前だと思っていたし、我慢も出来た。でも、さやかを中心に回る家族の輪の中で、私は一番外側を回っている気がした。父と母はいつもさやかの方を向いていて、私はその背を見つめるだけだった。
               
               暮れゆく参道に、両脇の木立からもの悲しいひぐらしの声が聞こえてきた。私は空を見上げて、大きく息を吐いた。墓地から続く細い道を下りながら、私の首筋に冷たいさやかの手が回されている気がした。
               

               翌日、母について村の中を散歩しに行った亮介が帰ってきたのか、大きな声で私を呼んだ。お昼ご飯の用意を止めて、エプロンで手を拭きながら庭に出てみると、カブトムシの入ったガラスの飼育箱の前に屈んでいた。タンクトップと半ズボンから小さな背中が覗いている。飼育箱に顔を突っ込みそうにしながら、夢中になっているようだ。
              「亮介」
               と、呼びかけて、私はハッと目を細めた。一瞬、息子の向こう側に屈んだ子供が見えた気がした。
              「ママ、見て! たっくんがくれたんだ」
               亮介は後ろを振り返り、飼育箱から足を必死に動かしているクワガタの背を掴んで取り出すと、私に差し出した。
               亮介の周りには子供などいない。どうかしてると、笑いかけながら息子に近づいた。
              「わあ、すごい!」
              「うん、裏山の木にとまっているのを捕まえたんだって。暗くなると木の汁を吸いに出てくるんだ」
               興奮した声で、目を輝かせている。村の小学生ともう仲良くなったのかと感心しながら目を細めた。
              「僕も捕りに行きたいなあ」
              「駄目! 山へ入って迷子になったら大変よ。それよりおじいちゃんが川に泳ぎに連れて行ってくれるって言ってたよ」
              「ほんと! やったあ!」
               クワガタを飼育箱に戻すと、亮介はゴムまりのように弾みながら駆けて行った。田舎で過ごす一週間は、呼吸数まで上がっているようだ。父に抱きつく息子を見ながら、微笑まずにはいられない。
              「亮介は元気がいいねえ」
               と、母が私の横に立って笑った。
              「うん、学校ではおとなしい方なんだけど、ここに来ると張り切っちゃうみたい」
              「子供だもの。元気なのが一番だよ」
               母の目は愛おしそうに孫を追っている。
              「お母さん……。辛いでしょうねえ。病気の子どもを持つって……」
               私を振り向き、母は小さな溜息を吐いた。
              「辛かったのは、あの子が手術をしているときと、死んでしまった時だよ。生きてさえいてくれたら、私も父さんも辛いことなんか何もなかった」
               母は、見つめる私に、思い悩むような目を向けて言った。
              「でも、おまえは辛かったと思う。さやかのために随分我慢させて、すまなかったねえ。本当に」
              「そんなことないよ。それに二十年も前のことじゃない。ただ、私も子供を持って、もし亮介が病弱だったらって、いつもそんなことを思うんよ」
               背に母の暖かい手を感じた。ポンポンと二度叩く。
              「おまえの幸せそうな顔を見るのが、私と父さんの喜びだよ」
               亮介の弾けるような声が、家じゅうにこだましていた。

               のんびりと過ごす午後。
               涼やかな風が開け放った家の中を通り抜ける。高校生まで暮らした家は、三十歳を過ぎた私でも、手足を伸ばして、子どものように心を開放できる。故郷というのは不思議なものだ。
               ひんやりした畳に寝そべってうつらうつらとしていると、いつの間にか夢に誘われた。
               夏のお盆――虫の声が聞こえて、真っ暗な中に、ぽっと赤い火が灯る。さやかの顔がぼうっと浮かんでくる。縁側に座ったさやかに、線香花火を見せてやっている。さやかは桃色の花柄のゆかたを着て、私もアジサイのゆかた……ああ、六年生の夏だ。花火の軸を摘まんだ手の周りでパッパッと朱色の火花が弾ける。さやかが歓声を上げる。そして、次第に弱い火花となって、赤い玉がぽつりと落ちた。瞬間、暗闇に閉ざされる。すると、か細い小さな手が私に向かって伸ばされた。
              ――おねえちゃん……。
               さやか!
              ――おねえちゃん……。
               ハッと目を開ける。ひぐらしの声がもの悲しく、薄暗くなった座敷に忍び込んでくる。じっとり汗をかいた額を拭いながら、息を整えてあたりを見回す。座敷を満たすオレンジ色の空気が、ひどく息苦しく感じた。
               慌てて起き上ると、追われるように座敷を出た。
               台所に入ると、母は夕餉の支度をはじめていた。
              「母さん、亮介は?」
              「ああ、泳ぎから帰って来て、たっくんのうちへ遊びに行ったよ」
              「え? そうなの。さっそく友達になったのね」
              「たっくんもこの村には小学生はいないから、喜んで遊んでくれてるみたいや」
               私は乱れた髪を後ろへ撫でつけて、ダイニング椅子に掛けられたエプロンを手に取った。
              「夕食の準備手伝うね」
               明るく言って、母の横に立ち、野菜の水洗いを始めた。

               夕食の準備ができ、外が暗くなってきた。山深い里の夕暮れは早い。
               柱時計を見て、そろそろ亮介を迎いに行かねばと思っていた時だった。
              「おばちゃん!」
               と、玄関の引き戸から、たっ君が顔を覗かせた。
              「あら、たっ君。亮ちゃんを送って来てくれたんか?」
              「ちがうねん……」
               母が口ごもったたっ君に近寄った。
              「亮ちゃんは?」
              「山にクワガタを探しに行ったんやけど……りょうちゃんがどこか行ってしもてん」
               母が絶句して、たっ君の小さい肩を掴んだ。
              「山から帰ってへんの!」
              「探したんやけど、どこにもおらへんねん」
               たっ君は泣き出した。私は台所から走り出て、玄関で長靴に足を入れると、
              「お母さん! 探してくる。お父さんにも来てもらって!」
               と、叫んだ。
              「わかってる! 村の人にも頼むさかい。ほら、懐中電灯持っていき。山はすぐ暗くなる」
               母に頷きながら、渡された懐中電灯を震えるほど強く掴み、外へ飛び出した。

               裏山の細い道にはもう闇が忍び寄っている。まだ西に夕刻の明るさの残る空と対照的に、杉木立に囲まれた谷間は、心細くなるほど暗い。
               私は声を張り上げ、亮介の名を叫んだ。クワガタのいる雑木林は墓地を通り過ぎて、山へ分け入らねばならない。もし奥へと入りこんだら、亮介に戻る方向がわかるはずはない。その先は険しい斜面が続いている。
              「亮介! どこにいるの!」
               声に驚いて鳥が飛び立った。嘲るような鴉の鳴き声が、四方から空へ放たれる。辿ってきた細い山道は薄闇にかき消され、懐中電灯を持つ手に力が入った。
               足を滑らせ、谷に落ちているのでは……。息を弾ませ、藪の中へ踏み込んだ。顔をしなる小枝に打たれながら、両手で掻き分け一歩ずつ進む。
              「りょうすけえ! どこ!」
               斜面に根を張っている松の木を抱き、辺りを頼りない電灯の明かりで照らす。もう明かりがないと足元が見えない。
               これ以上闇に包まれたら、探すどころか歩くのもままならない。
               見つけられなかったら! 途端に恐怖で足が動かなくなった。膝がぶるぶると震えだす。
              「りょうすけえ!」
               喉の奥がひりひりした。
               随分奥まで入ってきた。ここまで子供の足で登れるだろうかと、必死であたりを照らした。
               その時、私の立っている斜面の上にぼやっと人影が浮かんだ。
              「亮介?」
               そうつぶやいた瞬間、ぞうっと冷たいものが背を滑り落ちる。
               おかっぱの小さい子供……? こんな山の中に……。
               ごくりと唾を飲んだ。体中の毛が逆立つように、強張ってしびれる。動けない。
               藪の中に立つその影が、次第に形を現わした。闇に浮かぶ無表情な白い顔……。
               さやか!
               微かな影が、すうっと木立の奥へ動いた。行ってしまう!
              「ま、まって! 亮介が!」
               もつれる足を必死に踏み出す。
              「さやか!」
               叫んだ瞬間、ふっと影は消え去った。
               体から急に力が抜けてしまい、ふらついて溜まった枯れ葉に足を取られた。そしてバランスを崩し、急な斜面を滑り落ちた。何かを掴もうと手を動かしたが、体が回転して止められない。木にぶつかり激しい痛みが走った。
               漸く藪の茂った緩やかな場所に投げ出され、体がとまった。体中が殴られでもしたように痛い。うめき声が漏れた。
              「笙子!」
               後を追ってきた父が、がさがさと藪を掻き分けて近寄ってきた。
              「大丈夫か!」
               抱き起され、幾つもの懐中電灯の明かりに目を細める。何人かの男の人の顔が見えた。
              「足が痛い……。大丈夫、起き上れる……」
              「お前はもう家へ帰れ。村の人らが捜しに来てくれた。後は任せなさい」
               父は私の腕を肩に掛けると、抱くようにして起こした。そしてゆっくりと藪の中から連れ出してくれた。
               村中の人が集まっていた。大丈夫やと声を掛けられながら、私は項垂れたまま、父に連れられ山を下りた。
               痛みと、そして目にした幻影に体の震えが止まらなかった。
               さやかだ。間違いない……。
               妹は息子を守ってくれるのか、それとも……自分と同じ運命を与えるのか。
               
               家には母と村の女の人たちが集まっていた。母は足を引き摺る私に驚いて、居間に上げると、慌てて手当をしてくれた。
              「亮ちゃんは見つからなかったんやね」
               母が険しい顔で訊いてきた。
              「うん、あんな雑木林で見つけられないなんて、信じられない」
               と、私が言うと、手当を覗き込んでいた村のおばさんが、
              「こんな村に近い山で……。まるで神隠しやなあ」
               と、顔をしかめた。
              「大丈夫や。冬でもないし、山は冷え込まん。村中が出てくれてるから、今夜中に見つかるにきまっとる」
               もう一人のおばあさんが真剣な表情で言った。

               しかし亮介は、深夜近くなっても見つからなかった。
               そして捜索は一旦打ち切られた。
              「とにかく夜が明けたら、山の様子がわかる。辛いやろうが、やみくもに歩き回っても見つけられん。明るくなるまで待とう」
               帰ってきた父が、自分に言い聞かせるように呟いた。
               こんなことになるなんて……。
               亮介の無事を祈りながら、頭の中は不吉な思いでいっぱいだった。
               主人に携帯で連絡すると、明日一番に向かうからと短い言葉が帰って来て、
              「大丈夫だから、そんなに自分を責めるな。きっと見つかるから」
               と、取り乱す私を励ましてくれた。命より大事だと思っている亮介をこんな目に遭わして。夫の気持ちを思うと申し訳なさに涙が溢れてきた。父も母も、蒼褪めた顔で項垂れ、夜が明けるのを待っている。
               これは私への罰なのだろうか……。
               
               明け方近く、打ち付けて腫れあがった足と激しい頭痛に苛まれ、母に貰ったアスピリンのためか、横になったソファの上で私は浅い眠りに落ちた。
               亮介が楽しそうに笑っている……。
               雑木林のうっそうとした木立の間に笑った顔が覗く。カブトムシやクワガタが、木の幹にたくさんとまっていて、まるで宝物でも見るように目を輝かせている。そして、誰かに向かって叫んでいる。
              ――ねえ、すごいよ! 来て来て!
               おかっぱ頭の女の子が、亮介に走り寄った。
              ――りょうちゃん、あぶないよ。手をつないだげる。
               女の子は亮介としっかり手を繋いだ。同じくらいの背丈の二人が、並んで背を向ける。
              ――さあ、りょうちゃん、いこう。
               亮介が嬉しそうにこくりと頷くと、女の子が笑い返した。そして、ふいに私を振り返る。笑みを取り去ったその顔は、凍りつくほど冷ややかに見つめている。
               さやか……! さやか……、やめて! 亮介を連れて行かないで!

              「さやか!」
               飛び起きた私に、母が驚いて顔を向ける。
              「笙子、どうしたんや」
              「ああ、何でもないの。夢を見てたみたい。さやかの……」
               母は私の隣に腰かけて、肩を抱き寄せた。
              「大丈夫だよ。亮ちゃんはきっとさやかが守ってくれる。大好きなおねえちゃんの子どもなんやから」
              「うん……そうね」
               居間の柱時計が三時を打ち鳴らした。音のない居間に、不吉な警告のように大きく響いた。
               守ってくれる? さやかが亮介を守ってくれるなんてことがあるだろうか……。
               さやかは私を恨みながら死んでいったはずだ。私を罰するためなら、亮介の命だって……。神隠しという言葉がふいに浮かんできた。
               汗がにじんだ顔を手で覆った。許されるはずはない……。
              「お母さん……。さやかは私を許してくれない」
              「何のこと? 笙子」
              「私、山で女の子を見たの……。さやかだった……。恨んで出てきたのよ……お母さん」
              「まさか! そんなことありえへん」
               母が項垂れた私の顔を覗きこんだ。
              「恨まれているのよ、私……。さやかを死なせたのは私なんだもの」
              「なにをバカなことを!」
               母の叱責に、激しく頭を振った。
              「ほんとうなの。あの夜……さやかの部屋へ行ったの、なのに、私……」
              「笙子……、どういうことなん?」
               母の心配そうな困惑した顔が、涙で滲んでしまう。
               
               
               あれは六年生の冬休み前のことだった。私が流感に罹り、運悪くさやかにうつしてしまった。体力のないさやかは途端に高熱をだし、起き上れなくなった。
              「気をつけてって言うたやないの!」
               母はまだコンコンと咳をしていた私に、厳しい口調で叱った。
               それからすぐに入院となって、さやかに付き添うために母はひと月あまり、家に帰らなかった。楽しみだったクリスマスもお正月も、世界中からとり残されたように、我が家では忘れられた。父と私で作った質素なお雑煮だけのお正月。寒々とした居間のこたつに入り、ぼんやりとにぎやかなテレビを見ている淋しさ……。
               病院に行こうと言った父に、宿題があるから行きたくないと言い張ったのは、さやかの顔を見たくないと思ったのだ。私から何もかも奪い取る妹が、憎らしいと思う気持ちを持っていることに、私は気づいてしまったのだ。
               漸く妹が家に帰ってきて、またいつも通りの生活が始まるはずだった。でも今度は母が風邪をこじらせ寝込んでしまった。気丈な母が寝込むなど初めてで、私は父と家事をこなしながら、心配で仕方なかった。
               寝室におかゆを持っていくと、母は、「ありがとう」といって、青白い顔にうっすら笑みを浮かべた。寝間着から覗く痩せた首筋とほっそりした肩。このまま元気にならないのではないかと思うほどやつれ果てていた。なのに、母は、
              「さやかはご飯をちゃんと食べた?」
               と、妹の心配をする。私がこくりと頷くと、母は、
              「笙子、さやかをお願いね。やっと元気になったんだから」
               と、体調の悪さに顔を歪めながら、念を押した。
               小さなさやかは、暖房した部屋で電気毛布にくるまって、じっと窓を見ていた。いつの間にか降り出した雪が、窓の景色を真っ白に塗り変えていた。
               私が部屋に入ると、さやかは振り返って、
              「さやか、雪だるま作りたいなあ」
               と、甘えるように言った。
              「あかんよ! お母さんが病気なんを忘れたん?」
               きつい口調でいうと、さやかはしゅんとして肩を落とした。さやかも母を心配しているのは分かっていたが、優しい言葉を掛けてやる気がしなかったのだ。
               
               あの日は雪が降り積もり、とても静かな夜だった。さやかの隣の部屋で寝ていた私は真夜中に目が覚めた。何だか、呼ばれたような気がしたのだ。母が風邪のために、いつものようにさやかと一緒に寝ていないのはわかっていた。私が行ってやらねばならなかった。寒くて眠くて、ベッドから出るんだと思うと腹が立った。
               仕方なく寒さに身を縮めながら、ゆっくりとさやかの部屋のドアを開けた。
              「さあちゃん? トイレ?」
               とぶっきらぼうにベッドに向かって言うと、不規則で荒い息遣いが聞こえた。微かな豆電球の明かりに、さやかのベッドの白い布団が呼吸とともに動いている。
              「おねえ……ちゃん……」
               途切れ途切れに、さやかのかすれた声がした。
              「さやか? 苦しいの?」
               ドアノブを握ったままで、声を掛けた。
              「おねえちゃん……、おかあさんは?」
               さやかは細い手を私に向かって差し出した。いつもの発作だ。どきんと鼓動が跳ねた。
              「お母さんは風邪をひいて、具合が悪いからこれへん。ひどく苦しいん?」
              「ううん……」
              「じゃあ、朝まで我慢できるん?」
              「うん……」
               ドアに手をかけたまま、顔も確かめずに訊ねた。
              「じゃあ、我慢して寝とき」
               冷たい言い草だった。顔を見ていれば、さやかの体調に気付いてやれたのに、私は自分のいら立ちを妹にぶつけたのだ。
               そのまま、自分のベッドにもぐりこみ、目を固く瞑って体を丸めた。
               翌日、さやかを起こしに行った父が、息の途絶えた妹に気付いた。


              「お父さんとお母さんに、すぐに知らせに行っていたら、さやかは助かったのに……。ごめんなさい。ごめんなさい」
               母は嗚咽を漏らす私の肩を抱いたまま、何も言わなかった。ただ黙って、私の膝で握った手をぎゅっと掴んだ。
              「だから、私を憎んでる。さやかに恨まれても仕方ない……」
              「笙子!」
               母が突然私の両腕を掴んでゆすぶった。
              「あほなこと言うたらあかん。さやかがあんたを憎んでいるわけない。死んだのはあの子の運命や。病院へ行っていても助かったかどうかわからへん。笙子のせいやなんて、そんなことあらへん。きっと……、きっと救急車を呼んでも間に合わんかったと思う」
              「でも……」
              「さやかが生まれた時に、長くは生きられないと先生に言われたんや。だから、さやかのことを一番に考えようとお父さんと誓い合ったんよ。笙子が淋しい思いをしているのは分かっていたけど、短い命でも、さやかが生まれてきたことを、後悔しないようにしてやりたかった」
               母は優しい笑みを向けて、頷いた。
              「笙子はおねえちゃんとして、本当にさやかを大事にしてくれた。我慢することばっかりで辛かったと思うけど、いつもさやかと一緒にいてくれた。さやかは、毎日学校からおねえちゃんが帰るのをひたすら待ってたんよ。あんたといるときだけよ。無邪気な笑顔になったのは。病気と闘った七年間の人生で、おねえちゃんがいたことは、あの子にとって救いだったに違いない」
              「お母さん……」
              「だから、きっとさやかが亮ちゃんを守ってくれる。亮ちゃんはおねえちゃんの命だってわかっているから」
               込み上がる嗚咽に耐えられず、私は母の胸で二十年分の重い罪を吐き出すように泣いた。さやか、さやかと名を呼びながら。

               白々と夜が明けてきた。
               村の人たちが集まってくれて、消防団の人も駆け付けてくれた。父を筆頭に山へ入ってゆく。胸に手を組んで、ただ無事に見つかることを祈った。
               母は家に入ると、仏壇に燈明をともし、手を合わせた。
              「御祖父ちゃんお祖母ちゃん、さやか……。どうか亮ちゃんを助けてやってください」
               私も横に正座して、一心に祈り手を合わせた。
               そして仏壇の上のさやかの写真を見上げた。
              「楽しそうな顔してるやろう」
               と、母が言った。私が頷くと、
              「この写真は夏のお盆に撮ったもんよ。覚えてる? 笙子」
               と、合わせていた手を膝に重ねて、母はしみじみと眺めた。
              「新調したゆかたやね。でも盆踊りには行けなくて、庭で花火をしたんやったね」
              「そうや。あんたは行きたかったのに、笙子につき合ってやってくれた。この写真、修整して消してもらったけど、笙子の肩が写ってたんやで。さやかはあんたにおぶって貰っているんや」
              「え? 私がおぶっているの?」
               私は驚いて、食い入るように写真を見た。額縁にいっぱいのさやかの笑顔は少し顔が傾いている。
              「あんたの背中のさやかはいつも、こんな顔をして笑ってたんよ。うれしくって仕方なかったんやね」
               写真が霞む。頬に零れた涙を拭うことも出来ず、さやかを見つめた。
              「さやかは人を恨むような子やないよ。そんな感情を育てる間もなく死んでいったんや。笙子は優しいおねえちゃんやと、今でも大好きなはずやで。あんたやって、妹のさやかを憎んだりしてへんやろ? 何があったって、憎めへんやろ?」
               母の言葉に、私は大きく頷いた。
              「さやかのことを忘れんと、こうしてお盆に何があっても帰って来てくれる。さやかは楽しみにしてるはずや。さやかに詫びるのはそれで十分やと思うよ」
               嗚咽が込み上がってきた。畳に額をこすりつけて、呻いた。
              「さやか……本当にごめんなさい……。お母さんの前で、何もかも打ち明けて、こうして謝りたかった。ずっと、ずっと後悔していた!」
               妹を助けられなかった私が、亮介の無事を祈っている……。なんて身勝手なんだろう。
               私が罰を受けるのは当然なのかもしれない。 

               母と居間で、無言のまま、知らせを待った。
               裏山の見える窓辺に座り、唇を噛み締めて見つめる。
               夜明けから三時間たって、朝靄が切れ、澄み切った朝のすがしさが広がる。
               夫から京都駅に着いたと携帯が掛かり、まだ見つかっていないと言うと、落胆の溜息が吐かれた。レンタカーで向かうからと、夫は携帯を切った。 
               母の横顔を見つめた。妹が死んだときの、あの悲しみ。私は母のように耐えられない。指先の感覚が無くなっているのも気付かぬほど、握りしめていた。亮介がどれほど大事かと思うと、さやかへの罪の意識が増幅する。決して許されない罪……。
               なぜさやかに優しくしなかったのだろう。可愛い妹だったのに……。
               その時、玄関の引き戸が開く音がした。立ち上がった私達に、大きな声が掛けられた。
              「見つかったぞ! 子供は無事や!」
               神様!
               よろけながら玄関へ向かうと、消防団の上着を着た青年が、息を切らして笑っていた。
              「迷って崖から落ちたんや。腕を折ってるみたいやが、元気や!」
               体から力が抜けてしまい玄関にへたり込んだ。母が何度も青年に頭を下げて、泣いている。
              「大丈夫かい? ほら、早く山へ迎えに行ったろう!」
               青年はほころんだ顔で、泣きだした私を立ち上がらせてくれた。
               
               私と母は青年に付き添われ、裏山の登り口へ向かった。無事だという喜びに、足の痛みも気にならなかった。
               細い道を一列に並んで降りてくる人たちに、私は思わず手を振る。
              「ママ!」
               消防団の男性の背中で、亮介が叫んだ。
              「亮介!」
               後は言葉にならず、子どもを受け取ると、抱きしめて泣いた。亮介は顔中に擦り傷を負い、腕に添え木をしてもらって、頭に枯葉をつけている。安堵した父と、村の人や消防団の笑顔に囲まれて、亮介はぐっと泣きたいのを我慢している。
              「ありがとうございました」
               両親と並んで、お礼を言いながら、亮介を再び強く抱きしめた。
              「ママ、ごめんなさい」
               蚊の鳴くような小さな声で、亮介が謝った。への字になって今にも泣き出しそうな息子の口元を、肩に押し付けて、
              「ありがとうございます」
               と、繰り返した。すべての人に、すべてのものに、ただ感謝したかった。
               
               遠くに、救急車のサイレンが聞こえてきた。


              「で、クワガタは見つかったのか?」
               亮介は病室のベッドの上で、父親のぎゅっと睨んだ目に肩をすぼめた。
              「いたけど、木が高いんだもん」
               手柄を立てられなかったことをすねるように、口をとがらせている。
               息子の無事な姿を見て、夫は叱りたいのを我慢しながらも、安堵した顔を綻ばせている。道中生きた心地がしなかっただろう。疲れて赤い目は痛々しいほどだ。いつも銀行員らしくきっちり整っている髪が、搔きあげられて乱れている。
               亮介はたっ君がクワガタを見つけるのをみて、自分もと思い、山の奥へ入ってしまったのだが、帰り道がわからなくなり彷徨っているうちに、崖から足を滑らせ転落した。さほど高くなく、下が腐葉土だったために、運よく腕を骨折しただけで済んだ。でも、動こうとして、あまりの激痛に気を失ったようだ。そのまま深夜まで気が付かず、探しに来た人の声に応えられなかったらしい。朝になって、漸く声を出せて、助けてもらえたのだ。
              「亮介、山での冒険談はあとで、たっぷり、聞かせてもらうぞ」
               腕組みして言った夫に、亮介は項垂れて小さく「うん」と答えた。少しだけ得意な顔をして。
              「さあ、すこし眠りなさい。山は怖くて眠れなかったでしょ?」
               こくんと頷いて、無事な片手をシーツの中へ入れ込んだが、
              「あ、ママ」
               と、思い出したように目をまるくして私を見た。
              「なあに?」
              「ぼく、さあちゃんとあったよ」
              「えっ?」
              「真っ暗で怖いし、手は痛いしさ。……それで泣いていたら、さあちゃんが来てくれて、ずっと手を握ってくれてたんだ。だから真っ暗でも怖くなかったよ」
               私は亮介の言葉の意味が分からず、呆然として返事が出来なかった。
              「ほら、さあちゃんだよ! 仏壇の上の写真の女の子。ずっと一緒にいたんだ」
               そういうと、亮介はにっこり笑った。
               夫と顔を見合わせたが、彼はまさかと言う風にふっと笑うと、亮介の頭を撫でて言った。
              「わかった、わかった。亮介、ほら、もう眠りなさい」
               夫の言葉に、亮介は漸く目を閉じた。

               亮介を夫に任せ、病院の屋上へ上がった。夏の終わりを告げるような涼しい風が、頬を撫でてゆく。一面の緑の風景を見渡して、大きく息を吸い込んだ。そして、澄んだ青い空を見上げる。
              「さやか、ありがとう……亮介をまもってくれたんやね」
               呟いて、自分の肩に手を置いて、振り向いた。
              ――おねえちゃん、大好き!
               さやかの囁く声が、耳元で聞こえる。肩に置いた手に、小さな手が触れている気がする。
              「綺麗な空だね。真っ青……」
               私は空を指さし、妹に微笑みかけた。
               
                           了
              | 過去作  BY なみ | 02:05 | comments(0) | trackbacks(0) | - | ログピに投稿する |
              おひさしぶりです♪
              0
                 おお!
                 放置も年単位になってきた!

                 はい、関なみです。生きていました。
                 まだ、ちまちまと書いていますよ。 みなさん、お変わりないですかあ?

                 テンプレも新しくしたので、こっちもマメに更新していきたいと思います。
                 最近、仕事が忙しくて、落ち着かないとネットもすぐに放置しちゃうヘタレです(泣)

                 小説の方は「ごはん」で、鍛錬続けていますよ。
                 ち〜っとも上達せんですけど。

                 今日、「魔法のiランド」のHP覗いたら、がび〜ん!
                 使いやすくなっていた! 
                 で、小説家になろう時代に書いた「契約社員2」更新してきました。
                 なんせ、脱退後、データをすべて失っちゃったので、新しく書くことにしました。
                わはは、しかしへたくそ!
                 
                 賑やかしに、一作、書いてみましたので、良ければ読んでみてください。

                 これからはちょっと真面目に更新しますので、また近況教えてくださいね。
                 え? みんなプロになった?・・・・・・・・。サインくれい!
                 
                | 私のひとりごと日記 | 01:47 | comments(2) | trackbacks(0) | - | ログピに投稿する |
                人間って素敵
                0
                   先日、ニーチェの提言を解説している本を読んだ。
                  著者に関しては伏せておくが、いらだたしい気持ちにさせられたのは、それに反発する気持ちがあったからだろう。

                  弱者の深層心理。今の若者を空っぽのプライドと表現していた。
                  勿論、誤っているとは思わない。そういう人もいるかも知れない。努力を怠たっているにもかかわらず、世間に認められないことを社会が悪いせいだと思っている人。
                  そういう人を弱者というのであろうが、特出していない大衆と受け止められる書き方に憤りを覚えたのだ。
                  ましてや若者という言葉を羅列して説明するのは、著者が人生経験豊富な特出した人間だと尊大な気持ちを持っているからではないか。

                  被災地の現状を生々しく伝える報道の中には、若い人もいるし、働き盛りの人もいる。
                  勿論、その喪失感や危機感、不安は被災した人にしかわからないと思う。
                  悲惨な状況のなかでも、生きよう、頑張ろうとする人たちばかりじゃないか。
                  現実に救援の手を伸べられ、それにすがって生きねばならない人が弱者なら、何とか身を寄せ合って耐えようとしている姿に私は人間の強さを見る。

                  それぞれの生き方に、考え方に、ランクを付ける必要などない。
                  心に何を抱かえていても、生存することに意味がある。
                  そして、自分に恥じるところがないなら、それでいいではないか。
                  何かにぶつかり、後悔して反省して、自己を顧みて成長してゆく。人ってそういうものでしょ?

                  自分に何ができるか?・・・それを考える機会を今回の災害は与えてくれた。とても小さな存在の私に。

                  | - | 09:51 | comments(2) | trackbacks(0) | - | ログピに投稿する |
                  平和な毎日なんですが・・・。
                  0
                     連日の報道で、困難な生活をされている被災地の方に比べると、本当に安穏な生活なんですが・・・。

                    それでも細々と、いろんな出来事があります。
                    日常のそんな出来事も、命に別状がない限り、喜ばないといけないのだろうけど、昨日は流石に落ち込みました。

                    アルバイトに雇った人、やめてもらうことになったんです。
                    この就職難に、やめろというのは本当に申し訳ない。でも人件費やその人の適正を思うと、仕方ないと自分に言い聞かせました。
                    急に人繰りがつかなくなって、雇ったんですが、面接した私も補佐的な仕事ができればいいと考えていたので、安易な採用だったかなと猛省。

                    本当にバイトであっても、人を雇うのは大変です。
                    自分に合った職場を見つけてくれることを祈るばかり。。。
                    試用期間だからと上司はいうけど、やっぱり短くても一緒に働いたのですから、罪悪感もあります。

                    景気の波は若い人たちを、否応なしに飲み込んでますね。
                    安易な気持ちで仕事に向かっていてはいけないと、私は思います。
                    自分も襟を正した一件でした。

                    東北の惨状を思うと、日本は一段と波に洗われるでしょう。
                    自分の日常を守るために、頑張らないとと思います。

                    溜息・・・・。
                    | - | 11:17 | comments(0) | trackbacks(0) | - | ログピに投稿する |
                    皆さん、大丈夫でしょうか?
                    0

                      信じられない・・・皆さん、大丈夫でしょうか?

                      私も阪神淡路大震災の被災者なので、本当にあの時の恐怖が蘇りました。
                      それ以上の被災地の現状を、どう受け止めていいのか、わかりません。
                      平穏な日常が壊れていく数秒間の脅威。
                      想いも書けない街が破壊された跡。
                      人間がいかにもろいものか、自然の力に圧倒され、震える体を家族で寄せ合っていたのを思い出しました。
                      それがまた繰り返されたのだと思うと、言葉もありません。

                      街が復興するのに、長い時間がかかりました。
                      それぞれに不安を抱え、どうして生きるのか、どうすれば日常を取り戻せるのか、ご近所の皆さんと励ましあって暮らしていました。

                      遠方を、はるばるトラックで駆けつけてくださった東北の救援の方にも会いました。
                      どうかご無事でいてください。
                      お一人でも多く、救出されますように。
                      お祈りしています。

                      | 私のひとりごと日記 | 01:42 | comments(0) | trackbacks(0) | - | ログピに投稿する |
                      あけまして おめでとうございます♪
                      0
                         おめでとうございます

                        ついに新年を迎えてしまった。
                        随分と休眠させていました。
                        覗いていただいた皆様、申し訳ございません。

                        はい、元気でやっとります。
                        とにかく忙しかったので、HP及びブログ一切手を入れる間がなくて、放置してました。
                        創作の方は、まだやっています。
                        今年は書きかけのものを完成させ、公募にも(いつも締め切りで没)挑戦できるようにしたい。

                        しばらく書けない病が重くなって、某所にてリハビリ中でしたが、なんとかまた意欲も出てきました。
                        至る所で未完成のままの作も完結させたいですしね。頑張ります。

                        良い一年になりますように!!

                        ☆拳さん、こゆみん
                         おめでとうございます。コメント有難う!元気です。
                         後ほどお邪魔します〜〜っ!

                        | 私のひとりごと日記 | 02:46 | comments(0) | trackbacks(0) | - | ログピに投稿する |